人物を壁のそばまで移動させてから、壁に向かって走るように仕向ける。
現実であれば「いや壁あるし」と文句を言われるだろう。あるいは壁を押すフリをするかもしれない。誰だって言葉どおりに受け取って壁に向かって走って顔面強打するのはイヤだろう。
ファミコン、スーパーファミコンの頃。スーパーマリオは壁に向かって走ってました。
まあ、でも「所詮ゲームだしね」という事で流されていました。大人が見ても「ああゲームよね」と一瞬で分かるグラフィックだったので、特に問題はありませんでした。
しかし、ニンテンドー64という3D描写が出来るゲーム機でアニメかと思うようなグラフィックでマリオが登場した時、壁に向かって走る事はなくなってました。壁に向かってレバーを倒すとノロノロと歩くんですよね。
(全く動かない、というのはゲームの操作性がかなり悪くなってしまう)
その後出たゲームキューブや今流行りのWiiでもマリオは壁に向かって走りません。
見ていて、非常にしっくりくる表現です。世界観に嘘を混ぜたくない、という開発者の意思を感じます。あんだけ飛んだり跳ねたり空飛んだりと非現実的なマリオでも、わざわざ壁に向かって顔をぶつけるような事はしたがらんだろう、それをしてしまったら、そのマリオは痛みを感じない偽物になる。
余談ですが、マリオは痛みを感じるように作られています。高いトコから落ちたら痛みを感じ、走ってジャンプして壁に当たれば足を出して壁に当たる際のクッションにします。水に潜れば呼吸が苦しくなって、空を飛べば楽しそうに両手を広げる。能力そのものは超人でも中身が人間である事をこれでもか、とアピールします。多分、これは任天堂のかかげる「誰でも楽しめる」というモットーに沿ってるのかな、と思います。ゲームとしての「お約束」を使えばお約束を知らない人は楽しめませんから。
さて、そんなマリオ万歳話を踏まえて。
自分は今、ロストオデッセイというゲームを遊んでいます。Xbox360という最新ゲーム機用に開発された有名なゲームクリエイターと作家と作曲家と漫画家を起用して作られた超大作です。
うん、面白いですよ。止めるタイミングが分からない流れるようなストーリーや、勝つ方法をちょっと考えさせられるボスとの戦いなど超大作の名に恥じないな、と思います。『数年前の超大作』であれば。
同じクリエイターが作ったゲームにファイナルファンタジー8というゲームがあります。
おそらく「超美麗グラフィック」という宣伝文句に恥じないゲームの先駆けだったと思います。CG表現で難しいと言われた鳥の羽を大量に舞わせたり人間の顔のしわまで分かるほど細かい描写がされていたりと当時驚いた覚えがあります。
が、壁に向かって走ってました。8頭身の二枚目のお兄ちゃんやボインのお姉ちゃんが壁に向かってタッタッタッタと走ってました。違和感を感じましたが、きっと開発時間が足りなかったんだ、と思いました。
しかし、ファイナルファンタジー9になっても10になっても変わらず走ってました。12は諦めたのですでに買ってません。
壁に向かって走るなよ! と遊ぶ度に思いました。
そしてロストオデッセイでも相変わらず壁に向かって走ってます。グラフィックはとてもキレイです。それこそテレビで外国の景色を見るようなリアルさで景色が表現されています。でも、キャラクターは壁に向かって走ってます。しかもこのキャラクター、服装が全員夏服です。ヘソ出しやチューブトップ、半そで、生足と非常に涼しそうな格好をしています。そのまま雪国でも冒険しています。
想像してみてください。
吹雪の続く雪山にテントがひとつ。「寝るな!」とお互いに叩き合い励ましあう山男二人。でも格好が半袖と短パン。
変でしょう。違和感アリアリでしょう。もしこれが映画の冒頭部で流れたら観客は失笑ですよ。席を立つ者も出るでしょう。どう見てもコントです。雪山を知らない南国の人間が雪山の映画を撮ったらこうなるかもしれません。
それと同じようなシーンがこのゲームにもあります。
このゲームクリエイター坂口博信の感性はスーパーファミコンで止まってると言わざるを得ません。「映画のようなゲームを作りたい」とファミコンの頃から言ってきて、これなのか、と思うと正直悲しくもなります。
この人の作るゲームで感動して「ゲーム作る人になりたい!」と思った人は数え切れないです。だからこそ悲しい。
壁に向かった時に走らないようにする、という事がプログラム的にどう難しいのか、雪山で衣装を冬服にする事がどのぐらい困難な事なのか、自分は知りません。
でも、自分達で作った世界観に嘘を混ぜ込んじゃダメでしょう。いつまで「所詮ゲーム」という言葉に甘えるんでしょうか。
ロストオデッセイは、ストーリーがご都合的な個所もありますが、面白いゲームだと思います。自分はまだ途中ですがクリアまで遊ぶと思います。だからこそ余計に惜しい。
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