そらを自由に飛びたいな

おっさんのぼやきです。

ハルコイ


ハルコイ (Be・Loveコミックス)

ハルコイ (Be・Loveコミックス)


普段は少女漫画には手は出さないんですが、盗作騒動の末次由紀、という事で短編集を読んでみました。といっても、少女漫画はあくまでも女性がターゲットです。そこんとこは踏まえて自分は一歩後ろから見る感じで読みました。


読後感は「やっぱり少女漫画だな」という感じです。表題作の短編『ハルコイ』はアフタヌーン辺りに載せれば男性読者もガッツリいけるとは思いますけど、それ以外は自分にはピンとこない話が多かったです。
コマ運びは女性作家特有の細かい感じで、割と重要なキーを説明してるコマが小さかったりして、読む前から予想はついてたんですが「技術が若い」という印象を受けました。


例えば『ハルコイ』で、雨が降ってる中で言い争いをして荷物を落としてビショビショにしてしまう、というシーンがあるんですけど、荷物が落ちて「バシャ」と水が飛び散る絵を見るまで、自分は雨が降ってる事に気づきませんでした。何ページか戻ってみて、小さなコマで登場人物が傘を差してるのを見て、ようやく気づく、ってなもんで。
その次の次ぐらいのコマで建物の描写と雨が降ってる、という絵があるんですけど、雨が薄くてよく見ないと分かんないんですよね。多分、ドラマや映画を参考にしたんだろうな、と思うんですけどね。


フルカラーの映像であれば、空の色で分かりますけど、白黒漫画の場合、雲の色や空の色をつけたりしないので、分かんないんですよね。
重要なシーンだけに惜しいな、という印象を持ちました。


んで、こんなシーン描写の話って割と初歩だと思うんですよね。
誰か編集者がいれば、あるいは読んでくれる人がいれば、真っ先に指摘される事なんですよ。
「これ、雨降ってるのが分かりにくいね」と言ったり、あるいは読んでる人がページを戻してるのを見れば「どっか分かりにくいトコあった?」って作者が聞けるじゃないですか。
そういう制作に必要な環境がそろってないんでしょうねえ。この作者。


ただ、『ハルコイ』のお話そのものは非常に良い、と思いました。
50歳と23歳の女性同士の友情などは、まさに女性作家ここにあり! ってなもんで、男には絶対に書けない内容だと思います。
50歳のタフさや図々しさ、それでも女性の感性を忘れない、というキャラクターは非常に魅力的ですし、それと対比して23歳の初々しさや可愛さが際立ってて、お互いにお互いを引き立てあってて、良い組み合わせだと思いました。


伏線と思わせないように伏線もちゃんと張ってて、回収も丁寧で、話のオチが読めない。
ああこれがこの作者の本気なんだな、と感じました。素晴らしい。泣けました。


まあ、自分はやっぱり男子なんで『ハルコイ』以外の短編にはあんまり共感できなかったんですけどね。
あと、何冊か買ってるので、気になったのがあればまたレビューします。