天丼と天とじ丼について話したい。
ご飯の上に天ぷらを乗せて、天つゆをかけたものが天丼。
天ぷらをつゆと卵でとじてご飯にのせたものが天とじ丼。
自分は圧倒的に天とじ丼の支持者であり、
大日本天とじ党があれば、後援会を作る勢いなのであるが、
世の中にはあれを邪道と言う人達もいる。
確かに天ぷらにえらいこだわる職人であれば、
「天ぷらを食うのに、煮こむなんざ邪道ですよ」
と言われるのも致し方ない気がする。
だがしかし、そんな天ぷらを食えるのは、一部の特権階級だけで、
多くの市井の人間にとっては、天ぷらといえば、
家庭料理であるしなびた芋天とちくわ天なのである。
兄弟姉妹のいる家庭では、
「肉じゃないんだから落ち着こう」と12歳上の長子の宣言後に、
旬のオクラやナスばかりさりげなく取られて、
幼き末弟の自分には芋天しか残されていない、ということがままあった。
炭水化物ばかりでどう米を消費しろというのか!
こうなると芋天もおかずではなく、主食となり、
ご飯に直接ポン酢をかけたい衝動を、母親の目線で抑えられ、
仕方がないから、ポン酢をひたひたにつけた芋天をご飯に乗っけて食う。
食感としては、モサモサ。
口の中がモッサモサ。
膨れる腹とは裏腹に、胸を通り抜ける秋風に涙腺がゆるんだものである。
なので、自分にとって、天丼というと、
どうしてもあのポン酢でひたひたにした芋天ご飯が浮かぶのだ。
二度と食いたくない昭和の家庭料理である。
そして、全国の末子を代表して長子に芋を食えと言いたい。
長子らしく忍耐と我慢で余りがちな芋天を食べていただきたい。
さすれば、日頃やりたい放題の末子である自分も寛大な心を持ってやらないこともない。
そんなわけで、多くの家庭では、
柔らかめの天ぷらが食されていると思われるので、
サクサクパリパリの天丼よりは、
しっとり天とじ丼の方が合っていると思うのだがどうか。
玉子でとじてあるならば、芋天でさえもおかずの仲間入り。
おかず界のプリンス、玉子様である。
玉子と王子は似ている、とか言い出すと別の話題になるのでさておく。
とにかく、一般家庭の天ぷらを用いるなら天とじ丼だ。
特に安売りのかき揚げを調子に乗って3枚も買った時など、
天丼では胸やけすると思うんだが、
これは30歳を超えたからであろうか。
■天とじ党の活動内容。
1.天丼しか提供しない蕎麦屋に対して差別主義のレッテルを貼る。
⇒天とじ丼を食べる権利は万民にあるはずだ。
2.天丼に半熟卵をかけただけで天とじ丼と称する店に是正をうながす。
⇒大抵、この場合天ぷらも冷めていて胸やけ発生器と化している。
3.サクサクかトロトロかは自由とする。
⇒衣を固めに揚げればサクサクになると聞いたことがある。
4.コレステロール値には気をつける。
⇒30過ぎたら怖い。
5.イタリアン、ベーグルに続くOL御用達を狙いに行く。
⇒フライの乗ったドリアと思えばいいじゃないか。