何かログがあればよかったんだけど、残念ながら何も残っていない。
当時書いてた小説もとっくに消えてしまった。
ただ、コンピュータの専門学校でプログラムや色んな勉強をしていくにつれて、急速に自分の未来の可能性が狭まっていく感覚を味わっていた。
プログラムでは一等賞になれない。
絵や音楽は当然むり。
小説だって、ロクなもんじゃなかった。
じゃ、僕に残ってるものはなんだ。
いったい、どんな可能性が残ってるんだ。
何もない気がした。
自分に何もないから、何かある人達を積極的にサポートした。
喜んでもらえたし、その先で何かが完成する瞬間に立ち会えることだけで充分うれしかった。
それから一年後、21の時に初めて彼女が出来た。
彼女には『やる気』があったから、僕は一生懸命サポートした。
その結果、彼女から好かれて付き合うことになった。
それでも僕は彼女をサポートすることをやめなかった。
そしたら彼女は僕を置いてグングン伸びて行って、他の男と一緒にどこかへ行った。
今は更に別の男と結婚して子供を産んでそれなりに楽しく暮らしているらしい。
サポートした甲斐があったものだ、などと書くと、遠まわしな嫌味かと思われるかもしれないけれど。
何者にもなれなかった自分が唯一見つけた仕事が「何かを求める人」をサポートすることだ。
だとしたら、彼女の幸せを喜ばないのは嘘だ。
もちろん昔の恋人としては「爆発しろ」程度のことは思うけれど、同時に、一生そのまま幸せに過ごしてくれればいい、とも思う。
数少ない友人たちや、両親、家族は僕の幸せについて、色々と考えてくれているけれど。
実際のところ、僕は今も割と幸せだ。
部屋の中に一人でいて、さっき完了のアラームが鳴った洗濯機を気にしながら、こうしてキーボードを叩いている。
しかも、今度、猫を飼うんだ。
もっと楽しいに違いない。
結局、何もないまま、ここまで生きてきてしまったけれど、なんだかんだで楽しめている。
もちろん5年先や10年先のことを考えれば、暗い気持ちになったりもするけれど、それは今の情勢が暗いからそう思い込んでしまっているだけで、あまり問題はない。
トータルで考えれば、こういう生活も悪くないと思うんだが、どうか。