そう、現在、収入ランキングで上位に入っているような頭脳労働は数年後には無くなっているだろう、と自分も思う。
コンサルも市場予想も『既存の情報から未来予想する』なのでコンピュータの得意分野だ。ミサイルの着地点を計算するのと理屈は変わらない。
残る頭脳労働は、機械によるメリットが得られにくい、デザインや娯楽、感性に訴えるような労働が大半になるだろう。
「時限爆弾がある。赤と白、どちらかの線を切ればストップできる」という場面で、失敗して爆発させた方が面白いのか、それともハッピーエンドの方が面白いのか。
『商業的にウケる方』なら正解は決まっている。
しかし「刺さってほしい人物の心にどちらがより刺さるか」は、人の数だけある。
そういう意味で、作家業はなくなることはないだろう、と思っている。
チープで陳腐でチンケな言い方をすれば「売上は重要であるが、正義ではない」だ。
■カウンセリングってどうなんだろう。
『カウンセリング』と『アドバイス』に一線を引いた歴史的な偉人にロジャースさんという方がおられまして。
(精神や心理分野ではフロイトやユングに次いで名前が出てくる有名人)
ロジャーズ クライエント中心療法 新版 --カウンセリングの核心を学ぶ
- 作者: 佐治守夫,飯長喜一郎
- 出版社/メーカー: 有斐閣
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ロジャース曰く、
「先入観を持たず、相手の価値観を受け止める(受容)」
「相手の立場になって同じ感情を有する(共感)」
「自分がそのことに矛盾を感じない(自己一致)」
この三つが出来れば、あとは相手が勝手に話して、勝手に自己解決して満足して帰っていくのだそうです。
(ただし、実践はとてつもなく難しいです)
えらそーな助言もアドバイスも不要だ、という話です。
とはいえ「自己解決して満足して帰る。帰るが、それがいつの話とは言っていない」というわけでして、それだけだと長期化して社会生活に影響が出過ぎる、というわけで、現実には、それを促進する練習(訓練)を組み合わせて使っている現場が多いようです。
いかにも人間対人間、という感じがしますね。
■それじゃ、ロボには無理なのでは?
そうでもないんじゃないかなー、と自分は思っています。
先ほど挙げたロジャースさんの理屈が難しいのは、聞き手が人間だからです。
人間同士で『先入観を持たない』というのはまず不可能です。
なので、カウンセラーは『自身の先入観を自覚して、それを差し引く』という訓練をしますが、それだって完璧ではないです。
しかしロボなら先入観を物理的に消すことができます。
千時間以上かけて育てたキャラクターだって、リセットひとつで「あなたの名前を教えてください」の状態まで戻すことが可能です。
そして、子どもが人形に悩みを打ち明けるように、無機物になら人は安心して秘密をさらけ出すことができます。
(その無機物がインターネットに接続されてれば話は別ですが)
人間が機械を擬人化してしまうことはよくありますし、ペットロボが動かなくなって葬式挙げた、なんて話もあります。
ロボが相手であるデメリットはあまり無いと思います。
(ロボっぽい見た目がダメならオリエンタル工業に頑張ってもらえばよろしい)
■ロボに得意な仕事は『正解を出す』だけではない。
感性に訴えるような『解が複数ある』ものは苦手です。
しかし、『解を出さない』なら出来ます。
むしろ、体力の限界がある人間よりも根気よく話を聞いてくれるはずです。
日本では、広まりかけているカウンセラーという仕事ですが、案外、その終わりは早いかもしれません。
なんせ、ハードウェアの制約としては「マイクがPCにつながってること」だけなんですから。
■蛇足。
100年前の産業革命で肉体労働が機械に奪われたように、そろそろ頭脳労働が機械に奪われる日が来た。じゃあ、その先は? - orangestarの雑記
肉体労働を効率化はさせたけど言うほど仕事を奪ったか?
2016/08/05 11:24
自分も同じ感覚ですが、奪われた後の世代ってこういう感覚になってしまうんですよね。
アメリカの逸話で、ジョンヘンリーさんという方がいます。
肉体労働の仕事を守るために、作業機械と対決して、勝ったけど死んじゃった、という伝説的な方です。
興味ある方はどうぞ。