女一人30代後半で、低収入の弟に車を買い与えて、母親と二人暮らしで「恋愛はもういいわ」と言っていて。
田舎で独身女性というだけで風当たりが強いというのに、かけもちで働いて生計を立てていて、金の苦労など露ほども見せず、バカ男のボヤキも「他に言う人がいないんだろうな」で聞き流す。
そんな暮らしをしながら、たかが愚痴を言うだけで、毎日きちんとマジメに働くことはすごいと思う。
ホントはもっともっと稼げる仕事の出来る人なんだよ。でも、ここにそんな仕事はないんよ。
男はさー、俺もそうだけどすぐに「そんなのこうしてああして環境を変えちゃえよ」って言うし、思っちゃうのよね。
嫌なやつとは縁切るし、めんどくさいことは投げるし、それで文句言われりゃ「じゃあやめます」って言っちゃうしさ。
そういう事って回りまわって、逃げられない人にのしかかってんだよなー。
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もう地方はグズグズで、ずっと死にかけてて、ただ生きてる人がいるから死んでない、というだけで。
都会のが仕事があるし、勢いはあるし、若い子もいるしさー。まぶしいよね。
そこで自分が生きていけるどうかなんて二の次でまぶしい光に入りたくなるよね。
だってこの途方もない暗闇からしてみれば、人間一人なんて虫ケラだしさ。
それが電灯だろうと火だろうと関係なしに飛び込んじゃうよね。
でも、一人が都会に行けば、田舎から一人いなくなるんだよ。
それは国のせいとか総理のせいとか自治体がどうとかも問題あるのかもしんないけどさ。
国や総理や自治体に問題があるからといって、自分の問題ではない、という事にはならないんだよ。
そこから逃げてはいけないんだよ。
いや、いいんだけどね。逃げちゃっていいんだけどさ。でも、そういう人を俺はそう見るよ。