いやー、田舎半端ない。
自分が初めて漫画(3x3EYES)を買ったのは、ショッピングセンターに入ってた本屋だったんだけど、そのショッピングセンターが建物ごと無くなってた。
ショッピングセンターというのは、若い人は知らないだろうけど、ショッピングモールの小さいやつで、入ってる店舗も十軒ない感じの商店街の寄せ集めみたいなやつ。
見てみて大笑いですよ。
30年近く前に建って、ゲーセンなんて洒落たものはなく、ネオジオ筐体とかカプコンの筐体とかが数台あるだけのゲームコーナーがあってね。
よくそこで遊んでました。不良に百円カツアゲされたのもそこだし、殴り返したのもそこだ。
最後の十年ぐらいは「いつ来ても寂れてんなー」みたいな感じで、スーパーと百均しか入ってなかったんですけどね。
それでも建物はあったわけです。
それが、建物ごと消えて、更地になってた。
やー、ビビる。
自分の記憶が改竄されたんじゃないか、って思った。
と、そこまでショックを受けて「あ、俺のアイデンティティの一部はここだったのか」って気づいた。
■田舎はダメだダメだとは思ってたけど。
まだ、ワンチャンスぐらいあるんじゃないか、と内心思ってた。
やり方がまずいだけで、俺が最新の情報を勉強して、どうにかすれば、あと五十年ぐらいは戦えるんじゃないか、と。
でも、そのショッピングセンターが消えてはっきりわかった。
とっくに負けてたんだ。
ちっとも戦えるレベルじゃない。
ガソリンも弾薬もなくなってるのに、「竹槍でうまいことやればどうにか!」って訓練してるようなもんだ。
改めて、広い町内を車でぐるりと回ってみた。
集落は、家がたくさん並んでるけど、住んでる形跡はなく、どの家も安い白カーテンが下がってた。
そういう家は、誰にも買い取られず、取り壊すお金もないから、そのまま朽ちていく。
そんな集落が、たくさん、たくさんあった。
細々とやっていたはずのお店は夜になっても明かりがつかなかった。
夜中の七時に食堂に入ると、客が俺一人しかいなかった。
「この時間になると、こんなもんですよ。昼はもう少しいるけど」とのことだった。
朝食、昼食、夜食の順で客単価は上がっていく。
夜が繁盛しない食堂は正直きついと思う。
何度も通った、ご飯のおいしいカフェは、オープンして九年目に閉じたらしい。
料理の好きそうな女性二人が切り盛りしていて、若い女性とは目が合うと微笑まれたりして、「もしかして」なんて勘違いもした。
■悲しいとか寂しいとかじゃなく。
こんなに容易く、色々なものが無くなってしまうんだな、と思った。
胸のあちこちに穴があいたような感覚だけど、これはアイデンティティが壊れて、再構築されてる最中だからだ。
誰にでもあること。
生きていく上で避けては通れないこと。
■でも、勉強は続けます。
戦いが終わってから始まる戦いというのもあるので。