そらを自由に飛びたいな

おっさんのぼやきです。

ぽっかぽかの各巻感想を無駄に列挙してみる。

 

ぽっかぽか 1 (You comics)

ぽっかぽか 1 (You comics)

 
■1巻。
 
1988年発行。
主人公の麻美が、慌ただしい育児と家事に追われて「このまま枯れるだけなんていやだ」と『何か』を探し始めるところから話が始まる。
『青い鳥』話かと思いきや、実はそうではなく。
その回答に、高校の頃にハートをわしづかみされたのをいまだに覚えてる。すげーロマンティックで「女ってつえー!」と思った。
今の世相に合わせると1988年当時より強いセリフなんじゃなかろうか。
 
全体的に夢とか憧れとか若い話題が多い印象だけど、麻美は今見ても『男が求める主婦像』の正反対を行くのでカッコイイ。
 
■2巻。
 
慶彦に最初の出世チャンス到来。あすかがついに幼稚園に入園。
以来、2012年の今日に至るまであすかは幼稚園に通い続けることになる。
何の呪いだ。人気シリーズって怖い。
 
ここらへんからトラブルの話題として、近所の奥様がたが登場してくる。
大恋愛後の結婚で地味な生活に馴染めず、子供に夢を託してしまったり。
専業主婦と働く主婦がお互いに「うらやましい」と妬んでいたり。
 
ここらへんから本番スタート、という感じがする。
 
■3巻。
 
あすかが一次反抗期突入。
年を食わないのに、反抗期には突入するし、終了もするという不思議。
子供嫌いの女性、智子が初登場。
 
子供を寝かしつけたあとでシャツのボタンつけをする夫婦って、今もいるのかしら。
ユニクロ行けば1000円で服売ってるし、子供服も中古ならミキハウスが100円ってのを見たことがある。
節約に労力を使えるだけ元気よね。
 
あと、初恋話が女子目線ですごく良い。
 
■4巻。
 
家庭用焼却炉でゴミを燃やす慶彦。
現在は廃棄物処理法違反になります。時代やのー。
 
「(相手は疲れてるだろうから)良い日曜日を過ごそう」とお互いに画策する麻美と慶彦。
だけど二人とも寝坊してしまって。。。という話が古典的だけどやっぱり良い。
 
ただ、「夜遅く」23時に就寝して、翌朝10時まで寝坊してしまう、というのは今見るとすげえ不自然。
今の忙しい人だとストレスも抱えてるから長時間眠れないのよな。
 
あと「子供が出来ない」吉田さんの話は、明るいんだけど、やっぱり切ない。自分の子供がいないからこそ誰よりも子供好きでいられる、ってのはなー。
 
■5巻。
 
子供を虐待する母親初登場。
家庭用乾燥機もない時代。
梅雨時期に必死こいて洗濯物を乾かしたら、子供が汗まみれの体でダイブして台無しにしてしまう、っていうここに書いてるだけで心拍数上がりそうなエピソード。
 
そして、花嫁の父親と、あすかが『死』を知るエピソード。
 
給料日トンカツの話に、近所のおばあちゃん登場。
ここらへんから「夫婦が年食ったらどうなんの?」という話題が出始める。
 
■6巻。
 
無敵の「お母さん」こと坂田さんの原型登場。
ただしこの時点では姑の愚痴をこぼす近所のおばさん状態。
 
その姑がまた口が悪いんだ。
好き勝手言う。ズケズケ言う。夫婦間でもボロクソに言う。
だけどそのオチは結構好きです。
そうなれたらステキだなあ、と素直に思えます。
 
■7巻。
 
「結婚なんてバカのすることだ」と接待の席で取引先にケンカ売っちゃう渡辺くん初登場。
なんでこいつクビになんないの?
 
「『あと○ケ月で死ぬ病気』にかかったらお互いに伝えるかどうか」の話。
事前に約束しといた方がいいだろうけど、想像したくもないよねえ。
 
麻美のお父さんが亡くなる話は、年齢的にも他人ごとじゃないので身につまされる。
こういう時、そばにいてくれる人が欲しいなあ、と思うし、そばにいたいなあ、とも思うが相手がいないのでどうしたものか。
 
■8巻。
 
あすかが初めてウソをつく話。
カッコイイんだけど、かっこ良過ぎないのがいい。
 
後々、物語の切り札的存在となる園長先生初登場。
でも、この時点では普通の園長先生。
 
子供に怒りをぶつけたことで家庭で居場所をなくす後輩くんの悩みは、自分もありえそうで怖いなー。
大切にしていたものを子供にイタズラされるのって「子供のしたことだ」では済まないもんなあ。
 
慶彦があすかのワガママを叱りつける時に麻美に「少し怒るぞ」と許しを求めるところはかなり好きだ。
怒る前から「怒る顔」になるのは、怒らなきゃいけないからなんだよな。
なにより「叱る」ではなく「怒る」という言葉をチョイスするセンスが良い。
 
■9巻。
 
「子供がかわいくない」お母さんと「父親になる自信がない」お父さんの話。
全ての生き物は多様性があるので、多くの人が持っているであろう『母性』『父性』がない人も当然いる。
 
ただ、ヤケドを繰り返すことにより火を恐れるようになったように、本能は体験により遺伝子に刻まれた歴史なのだ。
であれば『母性』がなくとも『母性の代わりになるもの』を得ることは出来るのだ。
 
■10巻。
 
渡辺が結婚する。ほんとなんでコイツはクビに(ry
 
結婚と離婚と駆け落ちの話。
せっかく結婚したんだから幸せになりたい。
でも、相手がいることだから、そううまくいかないこともある。
 
そういう時の「相手を変えてやり直したい!」は個人的には全然アリだと思う。
ただ、それでもやっぱり、そうするなら最初からそうしておくべきなんだよなあ。
難しいけれども。
 
■11巻。
 
この辺りから、ご近所付き合いにおける麻美のポジションが「子育てのうまい人」になっていく。本人がいない所で「あの人が子育てで悩むなんて」とか噂されるぐらいのパーフェクト主婦。
 
そして育児ノイローゼの話。
 
「3時間ごとに泣く。きっちり3時間ごと。眠くてもおむつでも空腹でも泣く。なにもなくても泣く。でも、眠ると今度は淋しくなる」
 
どんな善人でも人間の出来た人でもどんどんボロボロになっていって、子供に当たるようになり、罪悪感から更にボロボロになっていく。
これ読んだ時以来「育児は一人でやるもんじゃない派」です。
 
■12巻。
 
育児ノイローゼの続き。
全然解決しないけど、それでも子供は育っていく。
んで、園長先生が何かに目覚めだす。
 
それはそうと2002年の発行なんだけど、慶彦と中村の接待芸が、昭和のままなのは良いのだろうか。二人羽織してカップ麺食べるとか、体育会系すぎる。
リストラ話がちょいちょい出てくるのは時事ネタだったんだろうなあ。
 
あと、ぽっかぽかには珍しい夫婦共働きで親子の生活時間がまったく合わない一家の話が良い。
手紙は良いアイデアだよなあ。多分、そういう実例があるんだろう。
 
■13巻。
 
弁当の話。
慶彦の地味な弁当に「俺の家のは重箱だぜ」と自慢する中村。
そして長続きしないという定番オチがわかっていても面白い。
 
園長先生がついに虐待ホットラインを開設。
これ以後、麻美がどうにか出来ない問題は丸投げされることになる。
 
■14巻。
 
ママ友が出来ない人の話。
けど、その効能を知ってしまえば、ママ友を作りたくなる、声をかけたくなる、という。
 
慶彦の両親が別居するという話。
「先が長くないから、どちらか一人になった時の予行演習」
これ、実際やってる夫婦多いそうで、自分の両親もこれに近いことしてるようです。さすがに子供には言いませんがね。
 
■15巻。
 
慶彦が新人研修に悩む話。美女でつっけんどん。
「ちやほやされてきたから人生を舐めているのか」という慶彦に、
「人生を舐めてたら、つっけんどんではなくブリブリになる」という麻美の回答が面白い。
 
娘の結婚式に出ることなく亡くなった父親の話は、もうストレートに涙腺にくる。
 
そして園長先生の虐待ホットラインの現状の話は結構難しい。
コンピュータプログラムなら「問題のないチェックソフト」で検査すればいいけど、人間は「問題のないチェックソフト」になることが出来ない。
 
■16巻。
 
幼子を残して両親が死んでしまう話。
ほんとにこればっかりはなあ。
「死なないようにしよう!」「長生きしよう!」で、長生き出来たら問題ないんだけどなあ。
 
んで、落ち着いて離婚する夫婦の話。
「価値観がどうしても合わなくて」「でもそこがとても好きだった」
難しいよねえ。
 
あと、食事による虐待の話。
健康的な食事を与えないのは虐待に当たるし、一緒に食べている大人の体もボロボロにする。
お手軽簡単な料理のレシピはいくらでもあるので、三食、手料理を作ろう、というオチへ。
 
「○○の素、○○のタレを全部捨てる」ってのは衝撃的だよなあ。
うちもやろうかな。
 
■17巻。
 
老いた夫婦たちの話。
 
伴侶を亡くした妻は、亡き夫の面影を連れて東京見物へ。
セカンドライフを過ごす夫婦は、ファーストライフの続きへ。
 
個人的に響いたのは、姑が嫁に強く当たる理由。
「この家を守るために、強い嫁になってもらわなくては困るんだ」っていう。
鬼教官モノは泣ける。
 
■18巻。
 
浮気する男と、泣かされる女の話。
もうなんていうか、すいません、としか。
ただ初期に子供嫌いとして登場した智子が、育児放棄をした友人に冷たくする箇所は、なんとなくホッとする。
 
あと「家庭は小さな教会」の話が良い。
洗礼も懺悔も出来る。
素直になればどこよりも居心地の良い場所になる。
 
■19巻。
 
愛する自信のない話。
 
産むのが怖いという妊婦と。
虐待されて育ったが為に、他人につい良い顔をしてしまう男。
 
「大人なんだから当たり前」ではなく、他の人よりも我慢を多くしたり、頑張ったりしたのだから、そこは褒めてやるもんだよなあ。
 
■まとめ1。
 
田所家はお金がないので、休日はよく公園でピクニックをするのだが、そのお弁当がサンドイッチではなくおにぎりなのが気にかかる。
 
自分は断然サンドイッチ派なのだ。
それもマスタードを効かせて一口食べるごとに鼻をおさえて涙をこらえつつレタスの食感を味わうようなやつがいい。それをコーヒーで流しこむがのたまらなく好きだ。
 
おそらく田所慶彦も似たようなジャンク味の趣味があるだろう。
それでも「公園でおにぎりが良い」と言えるのなら、それはもう単純にうらやましい話だ。
 
■まとめ2。
 
深夜に思い立って全巻感想を書いた。
一冊ずつ軽く復習しながら書いたので、結局6時間ぐらいかかった。
 
掲載誌が主婦向けなせいか、自分の周りで「読んでます」という人に会ったことがない。
けど、家庭は人が生まれて死んでいく最初で最小のコミュニティなので、そのことを知っておくのは、心の平穏を求める上で結構効果的なんじゃないかな、と個人的には思う。
 
万人向けではないので「オススメ!」とは言わないけど、読みたいという人には「ぜひどうぞ!」と言える作品です。