街〜運命の交差点〜
- 出版社/メーカー: セガ
- 発売日: 2007/08/30
- メディア: Video Game
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「いまさら」ですが、こないだプレイ動画を見ていた時に、そういえば書いてなかったと気付いたので書きます。
自分の初プレイはもちろんセガサターン版「街」です。
(運命の交差点というサブタイトルはPSに移植された時に付きました)
渋谷の街を舞台に8人のあまり関係のない人達が、ちょっとずつ影響しあいながら渋谷の(本人にとっては)激動の5日間を過ごす話です。
この「ちょっとずつ影響しあう」というのがポイントです。
例えば、コンビニで珍しいお菓子Aを発見して、おいしそうだから箱買いで全部買い占めた、という人がいたとします。
その直後に「そのコンビニにしかないお菓子Aが欲しい」と彼女に頼まれた彼氏がやってきたとしたら、その彼氏はお菓子を買えません。
結果、彼女には「コンビニのお菓子が売り切れるわけないじゃない! うそつき!」と怒られてフラれてしまう。
あーあ、誰かさんが買い占めなければよかったのに。。。
そこでプレイヤーは最初の人の行動で「買い占めない」と選択して未来を変えていきます。
ところが、買い占めなかったことによって、更なるトラブルに巻き込まれてしまい。。。というゲームです。
「へえ、面白そう」と思ったあなた!
PS3かPSPならたった600円で買えますからゲームアーカイブスで買っちゃってください。
(追記)勘違いでした。PSPのベスト版でした。
さて、ここからはネタバレ満載でいきます。
このゲームに登場する8人の主人公を最後まで進めた人は「花火」を見ると思います。
てんやわんやの日々をどうにかこうにか運命を変えまくって、ようやく迎えた運命の5日目。
最高の瞬間あるいは最大の不幸に巻き込まれたそれぞれの主人公を祝福するように、また慰めるかのように花火が渋谷の街にあがります。
ぴゅるるるるる〜パーン。ぴゅるぴゅるるぴゅぴゅるる〜パパパーン。
この花火は、頑張ったプレイヤーと主人公たちへの花火です。
この花火は「悪い運命は良い運命に変えられる」というゲームからのメッセージだと思います。
ところが、そのあと隠しシナリオとしてオタク男子「青ムシ」の5日間の話が始まります。
お世辞にも良い人だとは言いにくい青ムシの生活を嫌々ながらも見せつけられて迎える5日目。
ある一人の理不尽な死が、青ムシによって引き起こされたことだとプレイヤーは知らされます。
プレイヤーの多くは「どっか選択肢間違ったっけ?」と救う手立てを考えたことでしょう。
でも、多くの運命を変えてきたプレイヤーに与えられた選択肢は「話を進める」だけです。
「突然の避けようのない理不尽、それもまた運命」なんです。
セガサターン版は10人目のシナリオを出す条件が難しかったので、気づかないまま「なんだこのクソゲー」とここで投げ出した人もいると思います。もったいない!
ここから、更に最後の10人目。
理不尽な死を迎えた一人の、父親の話になります。
社会的にはそれなりに成功して、理解ある妻とかわいい娘、そして、かつてはかわいかった息子を持つ父親です。
家を出て行った息子を誰よりも愛し、だからこそ、素直にはなれず、ようやく帰ってきた息子に投げた言葉は「父親」ではなく「社会的に成功した男」の言葉になってしまっていた。
「違うんだ!」と心の中では思うものの、口からは次から次へと「常識的」な言葉、息子を傷つける言葉が出てくる。
もちろん、選択肢はありません。
いや、選択肢は父親の心にはあったのでしょう。でも選択できない選択肢だったんです。
正解が見えているのに選べない。
「選びたくとも選べない運命」です。
正解はわかっているのに行動に移せない。
社会的に見れば、他の主人公や登場人物の中でも、はるかに抜きん出て「成功した人間」であるはずの父親でも、この運命は覆せない。
でも、父親は、ひとつだけ。
運命にあらがう方法を思いつきます。
その方法こそが「花火をあげること」だったんです。
一方的でワガママで、他の人の立場や状況など一切考えないこの花火。
息子は、理不尽な死を迎えながら、この花火を見ます。
この花火が誰の手によるものか、など考えもしません。
ただ、息子の心を少しだけ救うことができました。
しかし、その結果を父親が知ることはありません。
それでも父親は満足げに笑って、話が終わります。
まとめ。
街は、多くの人で成り立っています。
誰か一人欠けたところで、誰か一人増えたところで街は大して変わりません。
でも、少しだけ変わります。
自分が少し優しい行動を取るだけで、どこかの誰かが救われるかもしれない。
自分が少し迷惑な行動を取るだけで、どこかの誰かがとんでもなく困るかもしれない。
そう思わせてくれるゲームです。
このゲームを初めて遊んだ高校生当時は、何故隠しシナリオが青ムシや父親なのか、もっと派手な話もってこいよ、と思いました。
でも、今は、このシナリオで良かった。本当に良かったと思います。
12年も経ってしまいましたが、こんなゲームを作ってくれたチュンソフトには心から感謝の気持ちを贈ります。
ありがとうございました。
ニコニコ動画で見つけた花火編(父親の話)です。長いですが、良かったらどうぞ。